坐骨神経痛に硬膜外ブロックは有効?効果・治療の流れ・注意点

今回は、腰からお尻、足にかけて痛みやしびれが出る「坐骨神経痛」と、その治療方法の一つである硬膜外ブロックについてお伝えします。

硬膜外ブロックは、坐骨神経痛に対する治療の選択肢の一つです。研究では短期的な痛みや機能の改善が報告されていますが、平均的な効果は小さい場合があり、長期的な痛みへの効果は十分に明らかになっていません。効果には個人差があり、注射の方法や研究対象によって結果も異なります。

坐骨神経痛は病名ではなく、腰から足にかけて現れる症状の呼び方です。原因や症状の広がりは患者さんによって異なるため、診察で原因を考え、そのうえで治療方法を決めることが大切です。今回は硬膜外ブロックの仕組みや効果、注意点について文献を参考に説明していきます。

目次

坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛は、腰やお尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて広がる痛みやしびれを指します。片側の足に出ることが多いですが、症状の場所や強さには個人差があります。

痛みのほかに、ピリピリする感覚、感覚の鈍さ、足に力が入りにくいといった症状がみられる場合もあります。足に痛みがあっても、必ずしも腰の神経が原因とは限りません。股関節や筋肉などが原因で似た症状が出ることもあるため、診察で症状や体の状態を確認する必要があります。1)

坐骨神経痛の原因

腰から足へ向かう神経の根元が刺激されたり圧迫されたりすると、腰だけでなく、お尻や足にも症状が出ることがあります。代表的な原因には、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症があります。

主な原因どのような状態か
腰椎椎間板ヘルニア椎間板の一部が突出し、近くの神経を刺激することがあります
腰部脊柱管狭窄症神経の通り道が狭くなり、腰や足の痛み・しびれが出ることがあります
臀部や股関節付近の疾患股関節や筋肉など、腰の神経以外が原因で似た症状が出ることもあります

診察と検査

診察では、痛みがいつから始まったのか、どこまで広がるのか、どの動作で強くなるのかなどを確認します。足の筋力や感覚、反射、歩行の状態なども診察し、必要に応じてレントゲンやMRIなど画像検査を検討します。症状だけで原因を決めるのではなく、診察所見や検査結果を合わせて治療方針を考えます。2)

尿が出にくい、尿や便を漏らしてしまう、股の周囲の感覚が鈍い、足の力が急に弱くなってきたといった症状がある場合は、緊急の検査が必要な病気の可能性があります。このような症状がある場合は、通常の予約を待たずに速やかに医療機関へご相談ください。3)

硬膜外ブロックとは?

硬膜外ブロックは、背骨の中で神経の周囲を覆う硬膜の外側にある空間(硬膜外腔)に、局所麻酔薬などを注入する治療です。腰や足の症状では、腰部や仙骨から注射する方法があります。

薬剤によって痛みを伝える神経の働きを抑え、症状を和らげることを目的とします。注射する場所や方法は、症状の範囲、診察所見、画像検査、患者さんの状態などを考慮して判断します。

硬膜外ブロックの効果とエビデンス

硬膜外ブロックは、痛みを和らげ、歩行や日常生活を行いやすくすることを目指す治療です。研究では、腰の神経根が関係する痛みに対する効果が検討されています。

米国神経学会の系統的レビューでは、頸部・腰部の神経根症を対象とした研究全体で、硬膜外ステロイド注射により短期の痛みや機能障害が改善する可能性が示されました。また、長期の機能障害が改善する可能性も報告されています。一方、長期の痛みへの効果については、根拠が十分ではなく、結論を出せないとされています。4)

長期的な改善を報告した研究もあります。腰椎椎間板ヘルニアや神経根炎の患者さんを対象に、仙骨硬膜外注射を2年間追跡した比較試験では、局所麻酔薬のみの注射群とステロイドを加えた注射群の双方で、痛みや機能の改善が報告されました。治療期間中の注射回数は平均約5回でした。ただし、この研究には注射をしないプラセボ群がありません。そのため、改善のすべてを注射の効果と断定できるものではなく、複数回の治療を行った条件で得られた結果として捉える必要があります。5)

また、仙骨硬膜外注射の系統的レビューでは、カテーテルを2日間留置する方法について、椎間板ヘルニアによる神経根痛などで3〜12か月の痛みや機能の改善を支持する中等度の根拠が報告されています。これは通常の単回注射とは異なる方法を含むため、結果をそのまま全ての硬膜外ブロックに当てはめることはできません。6)

一方、慢性腰部神経根痛の患者さんを対象に、硬膜外ステロイド注射・生理食塩水注射・皮下注射を比較した試験では、52週までの経過でグループ間に明確な差が確認されませんでした。7) 研究によって対象となる患者さんや注射方法、比較する治療が異なるため、効果の評価には幅があります。

坐骨神経痛を対象にしたコクランレビューでは、25件の試験をまとめ、硬膜外ステロイド注射により短期の足の痛みや機能障害がわずかに改善する可能性が報告されています。平均的な効果は小さく、全ての方に大きな改善が得られるという意味ではありません。9)

腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛のメタ解析でも、短期から中期の痛みの軽減が報告されましたが、長期的な痛みへの効果は限られていました。10) また、手術と神経根への硬膜外注射を比較したNERVES試験では、対象となった患者さんの18週時点で主要評価項目に統計学的な有意差は確認されませんでした。患者さんの状態や緊急性によって治療選択は異なるため、手術と注射のどちらが常に優れているかを示す結果ではありません。11)

文献で報告された内容読み取る際のポイント
神経根症では、短期の痛み・機能障害が改善する可能性 4)長期の痛みについては、根拠が十分ではありません
2年間の比較試験で、注射を複数回受けた患者さんの改善を報告 5)プラセボ群がなく、注射を受けない場合との比較ではありません
カテーテルを2日間留置する方法で、3〜12か月の改善を支持するレビュー 6)通常の単回注射と同一の治療条件ではありません
52週までグループ間の明確な差を認めなかった試験もあります 7)研究結果を複数合わせて考える必要があります
コクランレビューでは、短期の足の痛みや機能のわずかな改善が報告されています 9)平均的な改善の程度は小さいとされています
椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛では、短期・中期の痛み軽減が報告されています 10)長期的な痛みへの効果は限られています
手術と神経根への注射を比較した試験で、18週の主要評価項目に有意差はありませんでした 11)試験対象や治療条件を考慮して解釈します

このように、硬膜外ブロックには短期的な改善を報告する研究があり、特定の治療方法や条件ではより長い期間の改善を報告した研究もあります。特に、複数回の注射を行った研究や、カテーテルを用いた特定の方法で改善が報告されています。一方で、注射の方法や研究デザインによって結果が異なるため、長期的な効果を一律に約束できるものではありません。症状や治療経過を確認しながら、適応や治療目標を相談していきます。4)5)6)7)

硬膜外ブロックの流れ

硬膜外ブロックは、症状や検査結果を確認したうえで、適応や治療目標を相談してから行います。

症状・これまでの治療を確認 → 診察・必要な検査 → ブロックの適応と方法を相談 → 処置・経過観察 → 症状や生活への影響を再評価

段階内容
1. 診察痛みの範囲、しびれ、筋力、これまでの治療などを確認します
2. 適応の相談診察や検査をもとに、ブロックを行うか、どの方法が適切かを相談します
3. 処置前の確認既往歴、内服薬、アレルギーなどを確認します
4. ブロック・経過観察針の位置や薬剤の広がりを確認しながら処置し、その後の体調を確認します
5. 効果の評価痛みや動きやすさの変化を確認し、今後の治療方針を検討します

注意点・副作用

処置後に一時的な痛みやしびれ、足に力が入りにくい感じ、血圧の変化などが起こることがあります。頻度は高くありませんが、感染や出血、硬膜穿刺などの合併症も報告されています。大規模な診療記録を調べた研究では、入院や救急受診を要する重大な合併症はまれでしたが、感染や血腫が起こる可能性も示されています。8)

血液を固まりにくくする薬を服用している場合は、薬の名前と服用状況を必ずお伝えください。薬を自己判断で中断せず、処置が可能かどうかを診察で確認します。抗凝固薬・抗血小板薬の調整は、処置の種類や薬剤、患者さんの状態を踏まえて判断します。12)

当院での取り組み

当院では、症状の経過や診察所見、これまでの治療内容などを確認したうえで、神経ブロックが適応となるかを判断しています。硬膜外ブロックは治療方法の一つであり、全ての患者さんに行うものではありません。

当院には透視装置があり、神経ブロックの内容に応じて画像を確認しながら処置を行います。治療を行う場合は、期待できる効果や注意点をご説明し、患者さんの状態に合わせて治療方針を相談します。

硬膜外ブロックの一般的な仕組みや種類については、「硬膜外ブロックってなに?」の記事でも説明しています。

まとめ

坐骨神経痛は、腰から足にかけて現れる痛みやしびれの総称です。原因には腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などがありますが、症状や診察所見を確認して原因を考えることが大切です。

硬膜外ブロックでは、短期的な改善に加えて、複数回の治療や特定の方法で長期的な改善を報告した研究もあります。ただし、研究の条件によって結果が異なり、長期的な効果が全ての方に同じように得られるとは限りません。症状や診察結果を確認しながら、適応や治療目標を相談していきます。

当院ペインクリニック受診方法(川崎市中原区・武蔵小杉駅徒歩3分)

当院は原則予約制となっております。Web予約のペインクリニックからご予約ください。紹介状や以前に撮影した画像検査の結果がある場合は、ご持参いただきますようお願いいたします。

当院へのご予約はこちらから⇒Web予約 | こすぎ坂本医院

参考文献

1) Bateman EA, Fortin CD, Guo M. “Musculoskeletal mimics of lumbosacral radiculopathy.” PMID: 38726566. PubMed

2) “Recommendations for Diagnosis and Treatment of Lumbosacral Radicular Pain: A Systematic Review of Clinical Practice Guidelines.” PMID: 34205193. PubMed

3) “Assessment and early investigation of cauda equina syndrome: a systematic review of existing international guidelines and summary of the current evidence.” PMID: 40000448. PubMed

4) “Epidural Steroids for Cervical and Lumbar Radicular Pain and Spinal Stenosis: Systematic Review Summary: Report of the AAN Guidelines Subcommittee.” PMID: 39938000. PubMed

5) Manchikanti L, et al. “Effect of fluoroscopically guided caudal epidural steroid or local anesthetic injections in the treatment of lumbar disc herniation and radiculitis: a randomized, controlled, double blind trial with a two-year follow-up.” PMID: 22828681. PubMed

6) “Systematic review of the effectiveness of caudal epidural steroid injections in the treatment of chronic low back or radicular pain.” PMID: 39238877. PubMed

7) Iversen T, et al. “Effect of caudal epidural steroid or saline injection in chronic lumbar radiculopathy: multicentre, blinded, randomised controlled trial.” PMID: 21914755. PubMed

8) “Epidural steroid injection-related events requiring hospitalisation or emergency room visits among 52,935 procedures performed at a single centre.” PMID: 28726118. PubMed

9) Oliveira CB, et al. “Epidural corticosteroid injections for lumbosacral radicular pain.” PMID: 32271952. PubMed

10) Zhang, et al. “Efficacy of epidural steroid injection in the treatment of sciatica secondary to lumbar disc herniation: a systematic review and meta-analysis.” PMID: 38841695. PubMed

11) Wilby MJ, et al. “Surgical microdiscectomy versus transforaminal epidural steroid injection in patients with sciatica secondary to herniated lumbar disc (NERVES).” PMID: 33969319. PubMed

12) Narouze S, et al. “Interventional Spine and Pain Procedures in Patients on Antiplatelet and Anticoagulant Medications.” PMID: 29278603. PubMed

目次