代表的な症状と疾患

①肩の痛みの原因、診察方法、および治療方法

肩の痛みは様々な原因がありますが、痛みだけではなく可動域の制限を伴う場合や、夜間痛により睡眠への影響を及ぼす場合があります。可動域テストやX線検査などによる原因検索と共に治療を早期に行い日常生活への影響を改善していくよう進めていきます

原因診察方法治療方法
肩関節周囲炎身体所見、可動域テスト薬物療法、ブロック注射、関節内注射、物理療法、手術
腱板損傷身体所見、超音波検査、MRI薬物療法、ブロック注射、手術(腱板修復)、物理療法
石灰性腱板炎身体所見、可動域テスト薬物療法、関節内注射、関節鏡手術、物理療法
肩関節脱臼身体所見、X線検査、MRI脱臼の整復、物理療法、手術

治療方法

  • 物理療法: 筋力強化、可動域改善、痛み軽減のための運動療法の指導を行います
  • 薬物療法: アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)等の痛み止めの使用を検討します
  • 注射療法: 炎症や痛みの局所的な管理のための超音波装置を用いて神経ブロック注射や関節内にヒアルロン酸注射・ステロイド注射を行います
  • 手術: 保存的治療で改善が見られない場合や、超音波検査・MRIで炎症や損傷が重度の場合に検討されます

②首の痛みの原因、診察方法、および治療方法

首の痛みは首こり・肩こりのようにストレートネックや巻き肩など不良姿勢に伴う場合や、椎間板ヘルニア・頚椎症のように痛みだけでなく神経症状を伴うこともあります。痛みの部位の確認、神経学的検査、X線検査から原因検索を行い、薬物療法やブロック治療などの症状改善の選択方法を相談していきます。不良姿勢の姿勢矯正の指導も行っていきます

原因診察方法治療方法
筋筋膜性疼痛症候群
首こり・肩こり・巻き肩
身体所見、筋肉の触診、トリガーポイントの同定薬物療法、トリガーポイント注射、ブロック注射、物理療法
頸椎椎間板ヘルニア神経学的診察、X線検査、MRI薬物療法、ブロック注射、手術、物理療法
頚椎症神経学的診察、X線検査、MRI薬物療法、ブロック注射、手術、物理療法
外傷(むち打ち損傷)身体所見、X線検査、MRI頸椎カラー、物理療法、薬物療法

治療方法

  • 物理療法: 筋力強化、可動域改善、痛み軽減のための姿勢矯正や運動療法を指導します
  • 薬物療法: アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩剤を検討します。神経症状に対しては抗うつ薬(例:アミトリプチリン、デュロキセチン)や抗てんかん薬(例:プレガバリン、ミロガバリン)が神経障害性疼痛の管理に用いられます。効果が乏しい場合は弱オピオイド(例:トラマドール)を検討します
  • 注射療法: 炎症や痛みの管理のためブロック注射やトリガーポイント注射の適応があるか検討し、交感神経をブロックし血流の改善を促す方法を用いることもあります
  • 手術: 保存的治療で改善が見られない場合や、手術適応に該当する症状が出現した場合はCTやMRIの検査も含めて判断していきます

③腰・臀部の痛みの原因、診察方法、および治療方法

急な腰痛と慢性的な腰痛といった時間的な経過や、神経痛の有無、下肢症状の有無、痛みや痺れがでやすいタイミングなどから神経学的診察、X線検査を行い原因検索していきます。薬物療法や神経ブロック注射を併用しながら症状改善を図っていきます。姿勢矯正やインナーマッスルの使い方などの指導も腰痛予防として行っていきます。

原因診察方法治療方法
筋筋膜性腰痛症
筋肉の緊張や捻挫
身体所見、筋肉の触診薬物療法、物理療法、トリガーポイント
ブロック注射、温熱療法/冷却療法
椎間板ヘルニア神経学的診察、X線検査、MRI薬物療法、物理療法、ブロック注射、手術
脊柱管狭窄症神経学的診察、X線検査、MRI薬物療法、物理療法、ブロック注射、手術
腰椎すべり症神経学的診察、X線検査、MRI薬物療法、物理療法、ブロック注射、手術
腰椎椎間関節症身体所見、X線検査、CTスキャン薬物療法、物理療法、ブロック注射、関節内注射
坐骨神経痛身体所見、MRI、CTスキャン薬物療法、ブロック注射、物理療法
仙腸関節痛身体所見、X線検査薬物療法、ブロック注射、物理療法
圧迫骨折X線検査、CTスキャン、MRI薬物療法、ブロック注射、手術、物理療法

治療方法

  • 物理療法: 筋力強化、可動域改善、痛み軽減のための姿勢矯正や運動療法を指導します
  • 薬物療法: アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、筋弛緩剤を検討します。神経症状に対しては抗うつ薬(例:アミトリプチリン、デュロキセチン)や抗てんかん薬(例:プレガバリン、ミロガバリン)が神経障害性疼痛の管理に用いられます。効果が乏しい場合は弱オピオイド(例:トラマドール)を検討します
  • 注射療法: 炎症や痛みの局所的な管理のための神経ブロック注射やトリガーポイント注射を行います。症例によってはレントゲンの透視下でブロック注射や超音波を用いた神経ブロック注射を行っていきます
  • 手術: 保存的治療で改善が見られない場合や、神経症状が重度の場合に検討されます。CTやMRI検査を参考にしていきます。

④膝・股関節の痛みの原因、診察方法、および治療方法

膝や股関節周囲の痛みは関節内・関節外によるものか診察とX線検査から原因検索を行っていきます。稀に感染を伴うことがありますので、必要に応じて採血を行います。薬物療法だけでは痛みのコントロールが不十分な場合は関節内注射や滑液包へ注射療法を行います。日常生活への影響がでるような痛みの軽減や可動域の制限の改善を目標に治療を進めていきます。

原因診察方法治療方法
膝・股関節炎X線検査、採血、MRI薬物療法、物理療法、関節内注射
滑液包炎身体所見、超音波冷却療法、薬物療法、注射療法
筋肉や腱の炎症や損傷身体所見、MRI物理療法、薬物療法、注射療法
半月板損傷身体所見、MRI薬物療法、注射療法、理学療法、関節鏡手術
靭帯損傷身体所見、MRI薬物療法、物理療法、靭帯再建手術
大腿骨頭壊死MRI、CTスキャン薬物療法、物理療法、手術
股関節唇損傷MRIアルトログラフィ物理療法、関節内注射、関節鏡手術

治療方法

  • 物理療法: 筋力強化、可動域改善、痛み軽減のための運動療法の指導を行います
  • 薬物療法: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や痛み止めの使用を検討します
  • 注射療法: 炎症や痛みの局所的な管理のための超音波検査を用いた滑液包や関節内への局所麻酔薬注射、ステロイド注射、ヒアルロン酸注射または神経ブロックを行います
  • 手術: 保存的治療で改善が見られない場合や、損傷が重度の場合に検討されます一般的には関節鏡手術や膝または股関節置換術などが行われます

⑤神経障害性疼痛の4つの一般的な原因(糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、CRPS、神経障害に伴う疼痛)に関する診察方法と治療方法

原疾患の治療を進めていくとともに、関連する神経の範囲に対しての薬物療法や神経ブロックを行います。また、原疾患をはっきりと特定するのが難しい神経障害に伴う痛みも症例として経験します。痛みの性質や部位などから神経障害性によるものと判断していきます。神経障害性疼痛は慢性的な痛みの経過になることもあり、治療開始時に日常生活への影響を考えながら治療目標を設定して診療を行っていきます

原因診察方法治療方法
糖尿病性神経障害神経学的診察、血糖管理状態の評価血糖コントロール、薬物療法(抗うつ薬、抗てんかん薬)、物理療法
帯状疱疹後神経痛皮膚の検査、帯状疱疹の既往歴抗ウイルス薬(発症初期)、薬物療法(抗うつ薬、抗てんかん薬)、神経ブロック
CRPS(複合性局所疼痛症候群)病歴聴取、身体所見
神経学的診察、X線検査
薬物療法(抗うつ薬、抗てんかん薬、弱オピオイド)、物理療法、神経ブロック、認知行動療法、神経刺激療法
神経障害に伴う疼痛病歴聴取、身体所見薬物療法(抗うつ薬、抗てんかん薬、弱オピオイド)、神経ブロック、認知行動療法、神経刺激療法

治療方法

  • 薬物療法: 抗うつ薬(例:アミトリプチリン、デュロキセチン)や抗てんかん薬(例:プレガバリン、ミロガバリン)が神経障害性疼痛の管理に一般的に用いられます。重度の場合はオピオイドが検討されることもあります
  • 血糖コントロール: 糖尿病性神経障害の場合、厳格な血糖コントロールが症状の進行を遅らせるのに重要な要素となります
  • 物理療法: 運動療法やリハビリテーションで機能改善と痛みの軽減を図ります
  • 神経ブロック: 特定の神経障害性疼痛に対して、内服薬と併用しながら神経ブロックを行います。また交感神経のブロックを行い症状周囲の血流を改善し神経症状の軽減を図ります
  • ストレス管理:慢性化している症状に対して認知行動療法などのストレス軽減が有効とされています
  • 神経刺激療法:脊髄刺激などの方法で、痛みの伝達経路に電気的な刺激を与えることで痛みを軽減します

⑥慢性的な頭痛症状(片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛)に関する診察方法と治療方法

若年の方からご高齢の方まで幅広い年代で頭痛症状は起こります。頭痛の診察では一次性頭痛、二次性頭痛の判別をするとともに、一次性頭痛の特徴を問診・診察で判断し、内服薬の選択、内服の仕方の指導を行っていきます。必要に応じて神経ブロックを選択します。日常生活への影響を最小限にできるようにするのを目標にして治療を進めていきます。稀に頭痛が体の異変の危険信号であることがありますので、専門機関への早急な紹介対応を行うことがございます

原因診察方法治療方法
片頭痛身体検査、病歴聴取、神経学的診察、画像診断(必要に応じて)薬物療法(予防薬、発作時薬)、生活習慣の改善、ブロック注射、ストレス管理
緊張型頭痛身体検査、病歴聴取、神経学的診察薬物療法(非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩剤)、ブロック注射、ストレス管理、物理療法
三叉神経・自律神経性頭痛身体検査、病歴聴取、神経学的診察トリプタン製剤、酸素療法、ステロイド(短期間)、カルシウムチャネルブロッカー(予防治療)

治療方法

  • 薬物療法: 片頭痛にはアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬を中心に鎮痛を行い、発作時にはトリプタン製剤の内服を検討します。程度や頻度が多い患者さんには片頭痛予防薬(β遮断薬、カルシウムチャネルブロッカーなど)を検討します。緊張型頭痛には非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩剤が用いられます。群発頭痛には酸素療法やトリプタン製剤が効果的とされています。
  • 生活習慣の改善: 規則正しい生活、適切な睡眠、バランスの取れた食事が推奨されます
  • 神経ブロック:頭痛の種類によって様々な神経ブロックの方法があり、内服薬と併用しながら行われます
  • ストレス管理: 認知行動療法などのストレス軽減が有効とされています
  • 物理療法: 特に緊張型頭痛において、マッサージや熱/冷却療法が役立つことがあります

⑦上記以外の痛み(がん性疼痛、術後に関連する慢性的な痛み、痛覚変調性疼痛)に関する診察方法と治療方法

がん性疼痛や術後に関連する慢性的な痛みは痛みのコントロールだけではなく、精神的なケアも必要になることが多く、原疾患の治療やフォローの状況を把握しながら診療を進めていく必要があります。そのためこれらの疼痛の診察と治療は、患者の状態や痛みの特性を考慮して、医療機関ごとの連携や多職種によるアプローチが必要となる場合が多いです。

一方、痛覚変調性疼痛は線維筋痛症などが分類され、診断基準がある疾患もありますが病態の把握が難しく、また様々な症状を伴う事が多いため治療に難渋する傾向があります。日常生活への影響を考えながら治療目標を設定して診療を進めていきます

原因診察方法治療方法
がん性疼痛身体所見、画像診断(X線、MRI、CTスキャン)、生化学的検査(腫瘍マーカーなど)薬物療法(オピオイド、非オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬)、神経ブロック、放射線療法、化学療法、サポートケア(心理的サポート、物理療法
術後遷延性疼痛身体所見、病歴聴取、神経学的診察薬物療法(非オピオイド鎮痛薬、オピオイド、鎮痛補助薬)、物理療法、神経ブロック、マルチモーダル鎮痛
痛覚変調性疼痛身体所見、病歴聴取、神経学的診察、心理的評価薬物療法(抗うつ薬、抗てんかん薬、弱オピオイド)、物理療法、心理療法、神経刺激療法(脊髄刺激療法など)

治療方法

  • 薬物療法: 痛みの種類や原因に応じて、適切な鎮痛薬が選択されます。がん性疼痛ではオピオイドが中心となることが多く、痛覚変調性疼痛では抗うつ薬や抗てんかん薬が用いられることがあります
  • 物理療法: 痛みの軽減、筋肉のリラクゼーション、血流の改善を目的とした治療です。冷却療法や温熱療法、運動療法などがあります
  • 心理療法: 痛みに対する認知や感情の影響を考慮して、ストレス管理やリラクゼーションを通じて痛みの軽減を図ります
  • 神経ブロック: 痛みの伝達を遮断するために、特定の神経や神経叢に対して局所麻酔薬を注射します
  • 神経刺激療法: 脊髄刺激などの方法で、痛みの伝達経路に電気的な刺激を与えることで痛みを軽減します