片頭痛の治療について

前回は頭痛の種類・特徴についてお伝えしていきました。少し内容を忘れてしまった方は良ければ今回のブログを読む前に前回のブログを一度見直してみてください。

一次性頭痛、二次性頭痛の判別が重要であることと、一次性頭痛の片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛といった代表的な頭痛の特徴を覚えていただいたところで、今回は一次性頭痛の中で片頭痛の治療についてお話していきたいと思います。

目次

一次性頭痛の治療目的

一次性頭痛の治療目的は、頭痛重症度(頻度、程度、持続時間)の軽減によりQOLを改善させることと言われています。そのため生活への支障度のレベルに応じて治療を考慮していく必要があり、安易に市販薬で対応してしまうなど治療薬の選択を間違うと、必要以上の薬剤内服を必要とし、薬剤過多による頭痛を起こす可能性もあります。

そのため、予防薬の適応も含めて頭痛の種類の診断や生活への影響を考慮しながら重症度を問診や頭痛ダイアリーなどで把握していきます

片頭痛の治療の目的

急性期は片頭痛の発作を確実に速やかに消失させ、日常生活に影響を出さないことが大切になります。

急性期の治療の理想としては

  • 痛みと随伴症状をすぐに治す
  • 効果が安定している
  • 再発がない
  • 追加の薬剤が不要
  • 副作用がない
  • 患者さんご自身で使用できる
  • 高価な薬剤ではない

とされています。

では、どのような治療薬がエビデンスがあるか見ていきましょう。

一般的には

  • アセトアミノフェン
  • NSAIDs
  • トリプタン
  • エルゴタミン
  • 制吐剤

が挙げられます。

治療抵抗性や重症のものに関しては、鎮静麻酔薬、ステロイドも検討されます。

アセトアミノフェン、NSAIDsの薬剤は頭痛の一般的な治療薬に、トリプタンなど関しては比較的高価な薬剤もありますので、症状による生活への支障度に応じて治療薬を選択していく必要があります。

最近トリプタンの短所でもある血管収縮作用による副作用の症状を克服するため、血管収縮作用がない選択的5-HT1F受容体作動薬(ラスミジタン:レイボー)やCGRP受容体拮抗薬などの薬剤も登場しています。それによって、患者さんの状態にあった選択肢が増えている傾向にあります。

定時での内服はなるべく避けていき、慢性的な内服は薬剤過多の頭痛を起こさないようし、急性期にアセトアミノフェンまたはNSAIDsを検討し、コントロールが不良の症例はトリプタンを考慮するといった流れで治療を行っていきます。

治療効果としては痛みの改善や再発の有無だけではなく悪心の消失、光過敏・音過敏の消失など随伴症状への有効性も見ていきます。

トリプタンはどのタイミングで使用すべきか

先ほどのお話の通り、まずはアセトアミノフェン、NSAIDsでの対応になりますが、トリプタンは片頭痛発作の早期に使用することが効果的と言われています。おおよそ片頭痛発症から一時間くらいまでがよいです。ただし、前兆期、予兆期には無効と言われていますので頭痛が少し出てきたタイミングで飲むというのが良いと考えております。

トリプタンは色々あるけどどれがよいか?

片頭痛の治療薬ではるトリプタンは選択的セロトニン症候群作動薬という種類の薬になります。それぞれの薬の効果発現の早さ、効果の持続時間の長さ、副作用の少なさによって選択していきます。副作用はリザトリプタン(マクサルト)、ゾルミトリプタン(ゾーミック)が少ないと言われております。

一方、スマトリプタン(イミグラン)の注射薬は効果発現が最も早く、効果も高いです。内服ではリザトリプタン口腔内崩壊錠は効果が早く、再発率も低いと言われています。

色々なデータが出ておりますが、一般的にはよりよい効果が得られるようトリプタンを変更して見ていくのが望ましいとされています

トリプタンが内服出来ない場合は?

トリプタンは血管収縮作用があり、心筋虚血、冠血管攣縮、脳梗塞のリスクとなるため、虚血性心疾患や脳血管障害がある方には使用できません。また抗うつ薬などで用いられるSSRIやSNRIとの併用も作用機序が重なる部分があるため注意が必要となります。

このように、既往歴や他の内服との関連でトリプタンが内服できない方やトリプタンの副作用が強くでるような方に対して、片頭痛の発作時の対処として、先ほど登場したラスミジタン(レイボー)という選択があります。トリプタンとは違い血管収縮作用がないため、上記のような問題は起こらず使用できます。またトリプタンですと発作時早期に内服する必要がありましたが、ラスミジタンはトリプタンより遅れて内服しても一定の効果を示す傾向にあります。

片頭痛に対する予防的な治療は?

片頭痛発作が月に2回以上ある、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある患者さんは、予防的な治療を考慮していきます。

予防的な治療の主な目的は、頭痛頻度を下げる、頭痛の軽減、生活への支障を軽減などが挙げられます。ただし、内服薬を考慮する前に片頭痛の誘因や増悪因子となるような部分を避けるなどの対応を行ってからが望ましいです。

予防薬の種類としてはCGRP受容体拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、Ca拮抗薬など片頭痛以外にも使われるような薬剤が保険診療として認められています。

予防薬の効果判定にはおおよそ2か月かかり、有効性があれば半年から一年を目安に継続して、片頭痛のコントロールが良好になれば徐々に予防薬を減らしていくといった流れになります。

片頭痛に対する神経ブロックは?

頭痛に対する神経ブロックとしては後頭神経ブロック、星状神経節ブロックが知られています。

片頭痛の予防には星状神経節ブロックが有効とされています。星状神経節ブロックは交感神経をブロックします。それにより、交感神経機能異常の正常化や血管壁の浮腫みや炎症の抑制作用により、片頭痛の原因とされる脳血管の異常な収縮・拡張を正常化する目的となります。

片頭痛の発作時には頭痛の痛い場所によって判断していきます。頭の前の方にあたる前額部には三叉神経第1枝ブロック、頭頂部から後頭部の痛みには後頭神経ブロック、こめかみから側頭部の痛みには耳介側頭神経ブロックが有効とされていますが、まずは星状神経節ブロックを行うことが多いです。

まとめ

このように片頭痛は生活への支障の程度を考えながら適切に内服薬の調整をする必要があり、また薬剤の効果を聞きながら同系統の薬剤でも変更していくこともあります。

内服だけでは調整が難しい、副作用が出てしまう方などは神経ブロックを併用して行っていくこともございますので、片頭痛で悩まれている方は是非ご相談ください

皆さんが痛みに関する不安を感じずに受診できるよう、今後も痛みに関する情報を提供し続けます。質問や相談があれば、お気軽にお問い合わせください。健康な日常をサポートするお手伝いをさせていただきます。

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