緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛の治療について

これまで頭痛の種類・特徴について、片頭痛の治療について、お伝えしていきました。 こちらに関してまだお読みでない方は是非先にご覧になってください。

今回は片頭痛以外にも頭痛で割合が多い緊張型頭痛と、一次性頭痛に分類されている三叉神経・自律神経性頭痛の治療についてお伝えしてきたいと思いますので、是非ご覧ください。

目次

緊張型頭痛のおさらい

緊張型頭痛は通常は両側性で圧迫感や締め付け感があり、頭痛の強さとしては軽度から中等度で、数十分から数日間持続する痛みであることが多いです。ただし、平均して月の半分以上続くような緊張型頭痛は慢性緊張型頭痛となり、日常生活に支障をきたすが多いです。 片頭痛では悪心が伴う事が多いですが、緊張型頭痛は一般的には悪心は伴いません。しかし、光や音に対して過敏になることがあります。

また、日常的な動作での増悪はないと言われています。肥満や運動不足、喫煙などが緊張型頭痛のリスクになると言われていますが、片頭痛のように年齢を重ねるにつれて有病率の著明な減少はなく、高齢になってからの緊張型頭痛の発症の例もあります。

一次性頭痛の中で最も有病率が高く、女性に多いと言われています。緊張型頭痛の原因としては不明な点が多いですが、頭部、頸部周囲の筋肉の緊張が示唆されています。

緊張型頭痛の治療について

緊張型頭痛の治療について、急性期の治療と予防療法に分けて考えていく必要があります。 治療に関しては頭痛の原因を考慮して対処していく必要があります。緊張型頭痛は先ほど述べたように原因としては不明なところが多いですが、筋緊張によって皮膚、筋肉などが痛みに対して感じやすい傾向があると言われています。それだけではなく、慢性的にその頭痛の状態が続くと脳が痛みに関する対応に弱くなるということも示唆されています。

このような点を考慮して皮膚、筋肉などの痛みに対する対応の改善と、脳の痛みに対する改善を、内服治療や神経ブロックや姿勢矯正などの治療を行っていくのが重要となります。

緊張型頭痛の急性期治療

緊張型頭痛の急性期治療はアセトアミノフェン、NSAIDsのような薬物療法が中心となります。これらは単純に痛みに対して効果を出していく治療です。

また、筋緊張を和らげるチザニジンのような筋弛緩薬も考慮されることがあります。直接痛みに対して効くというよりも、原因と考えられる筋緊張の緩和を目的として処方していきます。その他に漢方では風邪などで使われる葛根湯も肩こりに適応があり、温めてよくなる方などには使用していくことがあります。

内服だけではコントロールが不十分な方には、神経ブロックを考慮します。触診や指圧を行いながら痛みのある部分を見ていき、トリガーポイントブロックを行うことがあります。また、頸部から背部の全体を覆っている僧帽筋の神経支配している副神経を神経ブロックすることや、後頭部のほうが筋緊張の中心であれば後頭神経ブロックを行うこともあります。 症状がひどい場合には自律神経の交感神経をブロックする星状神経節ブロックを用いることもあります。

緊張型頭痛の予防療法

予防療法の対象となる方は、頻発に反復する緊張型頭痛や慢性緊張型頭痛の方が対象となります。このような方は皮膚、筋への治療のアプローチだけでは、脳が痛みに対して弱くなっている部分の改善を見込めないためです。

まず、全体の緊張をとるためには抗うつ薬が有効とされています。脳から痛みの出る部分へ痛みを抑制する経路を刺激する効果もあり、痛みに対して弱くなっている脳を元の状態に戻す効果が期待されます。ただし抗うつ薬は副作用として喉の渇きや眠気など注意が必要となります。また、予防的にNSAIDsのような鎮痛薬を使用すると薬剤過多の頭痛を起こすことがあり適切ではないです。

薬物以外の予防療法ですと急性期にも用いた神経ブロックを行っていくことがあります。頭部から頸部の背側の筋緊張を和らげる効果があるブロックのため有効とされます。

それ以外では理学療法や認知行動療法など体へのアプローチや精神面へのアプローチも試みていく場合があります。これらは患者さんによる個人による差、指導する側の個人差も大きくエビデンスの確実性としては高くはないですが、臨床上は併用することが多いです。

予防療法に関しては、おおよそ3-6カ月程の期間を行いながら治療の有効性の評価をしていきます。

三叉神経・自律神経性頭痛のおさらい

三叉神経・自律神経性頭痛は短時間、片側性の頭痛発作と結膜充血、流涙、鼻漏などの頭部の副交感神経の自律神経症状を伴うことが特徴とされています。

これらの特徴がすべて出るわけではなく、その特徴の組み合わせに合わせて群発頭痛や発作性片頭痛、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作などいくつかの分類にわけます。

代表的な群発頭痛について有病率では片頭痛などに比べててもかなり少ないと言われており、20-40代の男性が多いと言われています。

たばこやアルコールなどが誘発因子とされ、診断するときの情報としても有用となります。名前の通り三叉神経や自律神経、それに伴う血管が症状に関与しているとされており、治療に関してもその特徴を考慮しながら対応することになります。

三叉神経・自律神経性頭痛の治療

群発頭痛の発作期の治療はスマトリプタン皮下注と酸素吸入がエビデンスとして確立されています。在宅酸素の保険適用が認められましたので治療の選択肢が増えました。

発作性片頭痛や持続性片側頭痛にはインドメタシンが有効とされており、経口、座薬の投与があります。

短時間持続性片側神経痛様頭痛発作にはガバペンチンなど神経に作用する薬剤が有効とされています。

内服以外での治療法として神経ブロックは自律神経をターゲットとする星状神経節ブロックを用いることがあります。三叉神経ブロックや後頭神経ブロックも有効性が見られるときがありますので、症状の部位や痛みの程度で判断していきます。

予防治療としては誘発因子となる飲酒、喫煙などを避けるの必須となります。内服や神経ブロックに関しては確立されたものはないですが、片頭痛などで用いられている一部の内服薬が群発頭痛の予防にも有効とされています。

まとめ

有病率が多い緊張型頭痛や、稀ではありますが症状が強い傾向にある三叉神経・自律神経性頭痛について今回はお伝えしていきました。

基本的には日常生活で増悪の誘因となりうる因子を排除しながら、内服薬や神経ブロックで対応していく流れとなります。

頭痛の種類を分類するだけではなく、片頭痛や他の部位の症状と絡むこともございますので、ペインクリニック外来では全身評価の上で治療を進めていく形で対応させていただいております。

症状にお困りの方は是非ご相談ください。皆さんが痛みに関する不安を感じずに受診できるよう、今後も痛みに関する情報を提供し続けます。質問や相談があれば、お気軽にお問い合わせください。健康な日常をサポートするお手伝いをさせていただきます。

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