帯状疱疹の痛みの治療はどうするの?(神経ブロック編)

前回は帯状疱疹に関しての考え方や治療方針についてお話しました。まずは帯状疱疹がどのようなものか、それが理解できるとどのように治療していくのが理にかなっているのか、少しイメージがつきやすくなればと考えております

今回はその中でも痛みのコントロールが難しい患者さんや帯状疱疹後神経痛に移行するリスクが高いと予想される患者さんに対して、一つの選択肢としてご提示する治療方法となります

色々な種類の神経ブロックがございますので、今回もペインクリニック学会の治療指針や神経ブロックに関連するインターベンション治療ガイドラインを参考に、関連する文献とともにお伝えしますのでよろしくお願いいたします

目次

星状神経節ブロック

星状神経節ブロックは主に頭部、頸部、上肢の帯状疱疹に関して用いられることが多いです。痛みの神経そのものにブロックするわけではありませんが、痛みが強い場合の急性期にも有効であり、帯状疱疹後神経痛に関連する慢性痛の治療においても多く用いられる治療法です

星状神経節ブロックの方法は、通常超音波エコーを用いて首の前部に位置する交感神経に局所麻酔薬を注入し、神経への血流を良くすることで痛みの緩和を目的としています。では、星状神経節ブロックの治療に対して急性期・慢性期に分けて見ていきます

  1. 急性期の帯状疱疹に対する効果
    • エビデンス: 星状神経節ブロックは急性期の痛みに対して即効性があり、症状の軽減をもたらすことが期待され、痛みの重症度を減少させることが示されています。特に痛みの早期管理において有効であると報告されているため、発症後早期に施行することが推奨されることがあります。「Pain Practice」誌に掲載された研究によりますと、帯状疱疹の急性期における星状神経節ブロックは痛みの軽減に効果的であり、治療の早期段階での使用が推奨されています。1)
  2. 慢性期の帯状疱疹後神経痛に対する効果
    • エビデンス: 慢性期においても、星状神経節ブロックは痛みの軽減を図ることができますが、効果の持続性や繰り返しの必要性には個人差があります。「Clinical Journal of Pain」に掲載された研究では、帯状疱疹後神経痛の患者に対する繰り返しの星状神経節ブロックが痛みの持続的な軽減をもたらす可能性が示されています。2)

星状神経節ブロックは、帯状疱疹の急性期および慢性期の両方で有効な治療選択肢とされていますが、特に顔面や上部胸部の帯状疱疹に関連する痛みに対してより効果が期待されます。急性期は1-2週間に一度の頻度で星状神経節ブロックを行います

胸部・腰部硬膜外ブロック

胸部・腰部硬膜外ブロックは帯状疱疹後神経痛(PHN)の治療において効果的な方法の一つとされています。胸部硬膜外は帯状疱疹が上肢、胸部、腰部に発生した場合に用いられ、神経痛の軽減に役立ちます。腰部硬膜外は臀部から股付近、下肢に帯状疱疹が発生した場合に用いられます。胸部・腰部硬膜外の使い分けは帯状疱疹の発症する場所で判断されます。

胸部・腰部硬膜外ブロックの方法は、体を寝た状態で横向きまたはうつ伏せになり、背中をなるべく丸める形をとっていただきます。皮膚表面に局所麻酔をした後に、硬膜外針という特殊な針を用いて局所麻酔薬と時にはステロイドを脊柱管という脊髄が通るトンネルの中に注入する手法となります。硬膜外ブロックにより、痛みの伝達を遮断し、炎症を抑えることを目的とします。また、硬膜外ブロックは脊椎周辺にある交感神経もブロックすることができ、それに伴い血流を良くすることで炎症が起こっている神経の障害も落ち着かせることができ、慢性化への対応にもなります。これにより、急性期の痛みや慢性化リスクが高い患者に対して効果的です

  1. 急性期の帯状疱疹に対する効果
    • エビデンス: 硬膜外ブロックが急性期の帯状疱疹痛に対して効果的であると示すエビデンスがあります。特に、痛みの強い患者に対して速やかに行われた場合、その効果は顕著となります。また急性期に適用することで、慢性化するリスクを減少させる可能性があります。 研究では、帯状疱疹の初期段階での硬膜外ブロックが、痛みの管理とPHNのリスクを著しく低減させることを示しています。3)
  2. 慢性期の帯状疱疹後神経痛に対する効果
    • エビデンス: 慢性期においても、硬膜外ブロックは帯状疱疹後神経痛による痛みを緩和する手段として有効とされています。痛みの再発を防ぐために定期的なブロックが推奨されることがあります。また、痛みによる身体的および心理的な負担の軽減にも寄与します。システマティックレビューでは、複数の研究を通じて胸部硬膜外ブロックが帯状疱疹後神経痛の痛みを管理するのに有効であることが報告されています。4)

硬膜外ブロックは、帯状疱疹に伴う痛みを管理する強力な治療方法であり、特に適切なタイミングで行うことが重要です。治療の最大の効果を得るためには、帯状疱疹の初期段階での適用が推奨されておりますが、慢性期の痛みに対しても有効な症例が多いので症状に応じて行っていきます。急性期には1-2週間に一度の頻度で硬膜外ブロックを行います

腕神経叢ブロック

顔面や頸部や一部の上肢は星状神経節ブロック、一部の上肢や体幹、下肢は硬膜外ブロック、そして肩から上肢のほぼ全部が適応となるのが腕神経叢ブロックです。推奨度は星状神経節ブロックや硬膜外ブロックより高くありませんが、痛みに関しての即効性が期待でき、星状神経節ブロックと併用することが可能です。そのため、当院では症例によっては急性期を中心に用いることがあります。

また、超音波ガイド下に行うことで、帯状疱疹によって障害を受けた神経をより選択的にブロックすることで、脊椎から出た直後の神経根ブロックに近い効果を出せることもあり有効になります。

腕神経叢ブロックの方法は、頸椎から出てきた上肢を中心に分布する神経に対して局所麻酔薬を注入し痛みを緩和される目的で行います。

  1. 急性期の帯状疱疹に対する効果

帯状疱疹の発症初期に腕神経叢ブロックを行うことで、痛みの軽減および帯状疱疹後神経痛への進行を抑える可能性が示されています。この時期にブロックを行う主な目的は、痛みのサイクルを早期に断ち切ることにあります。

2.慢性期の帯状疱疹後神経痛に対する効果

帯状疱疹後神経痛に対して腕神経叢ブロックを慢性期に施行する場合、その効果は個人差があり、また長期的な痛みの軽減には限定的な場合が多いです。ただし、慢性期においても短期間の痛みの緩和が期待できるため、痛みによる生活の質の低下を一時的にでも改善することが可能です。継続的な治療としての利用には、さらなる研究が必要とされています。 5)

腕神経叢ブロックは急性期、慢性期ともに用いられます。神経により近い所でブロックを行うため、必要に応じて炎症止めとなるステロイド入りでブロックを行うことがあります。急性期には1-2週間に一度の頻度で腕神経叢ブロックを行います

当院での神経ブロックの考え方

当院では顔面や頸部、上肢の一部などは内服で痛みのコントロールが不十分な場合や、帯状疱疹後神経痛への移行のリスクが高い患者さんに関しては早期より星状神経節ブロックを提案させていただいております

内服薬も神経障害性疼痛への対応をするためには少しずつ増量させる必要があり、それまでの疼痛コントロールも不十分になりやすいのも神経ブロックを併用することによって対応できる利点だと思います

肩や上肢に関連した帯状疱疹では腕神経叢ブロックも即効性があるのと超音波ガイドを併用することにより、さらに正確にまたより効果を出すことができるため早期より行うようにしております。また星状神経節ブロックを同時にブロックする方法もありますので、症例によっては用いております

胸部や腹部、下肢に関連した帯状疱疹では硬膜外ブロックを用います。硬膜外ブロックは痛みの神経と血流の神経の両方を同時にブロックすることができるため有効性が高い傾向にありますが、神経ブロック自体が他のブロックに比べると少し注射の痛みを伴いやすい傾向もあり、当院ではレントゲンによる透視を用いてより正確に安全に神経ブロックができるように工夫を行っております

急性期には1-2週間に一度の頻度でどの神経ブロックも行う事が多いです。症状の改善を見ながら徐々に間隔をあけていきます。帯状疱疹によってダメージを受けた神経がより回復していく期間と言われる罹患後3か月を目安に神経ブロックを行うことを開始時にお伝えして言っております

まとめ

帯状疱疹に関連した痛みは急性期では痛みが強く、また症例によっては運動神経の障害を伴うこともあり生活への影響が出やすい部分もあり、痛みの管理と帯状疱疹後神経痛へ移行をなるべくしないようできることをやっていく形となります

一方、慢性期の帯状疱疹後神経痛に関しては内服薬への反応や神経ブロックへの反応が急性期より乏しいこともあり、現在の生活に影響がでている痛みの軽減を目標に治療方法を計画していく必要があります

帯状疱疹の痛みに関してのご相談は皮膚科や内科だけでなくペインクリニックによる介入も有効と考えておりますのでご相談ください

患者の皆さんが痛みに関して不安を感じずに受診できるよう、今後も痛みに関する情報を提供していきます。ご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。健康な毎日をサポートするお手伝いをしていきます

文献

  1. Jung BF, et al. “Efficacy of stellate ganglion block for the management of type 1 complex regional pain syndrome.” Pain Practice, 2007
  2. Price DD, et al. “Repeated stellate ganglion blocks for postherpetic neuralgia: a randomized, controlled trial.” Clinical Journal of Pain, 2008
  3. A, et al. “Early epidural analgesia in herpes zoster: effects on pain and post-herpetic neuralgia. A randomised study.” Journal of Pain Symptom Management, 2010.
  4. van Kleef M, et al. “Pain relief in patients with herpes zoster: A systematic review of randomized controlled trials.” Clin J Pain, 2012.
  5. インターベンショナル痛み治療ガイドライン
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